江蔵浩一さんへ ～1985年6月 その5～
新型コロナのため家にいる時間が多くなった。
やることも無いので部屋の整理をしていると・・・
昔の手帳が出てきた。
1985年から2010年まで。
あの頃はスマホどころか、ガラケーも無い時代で、予定は手書きで手帳に書いていたのだ。
2010年以降はきっと携帯に予定を打ち込んだためにないのであろう。
さて、ちょっとだけ手帳のなかを覗いてみるか。
1985年、私は大学を卒業、就職、それと同時に新宿でバンド活動をしていたのだ。
この頃は新宿ロフトの店員バンドＰＬＭに参加していた。
1985年 6月8日 〇
6月9日 〇
毎週土日に練習している。
ん？あああ思い出した。時を戻そう。
このブログを書いている時に、江蔵浩一さんの死を知った。
江蔵浩一さんは、ジャニーズ出身のギタリストだ。
その後、様々なバンドを経て、映画音楽などのプロデユーサーをしていた。
最近は、専門学校でギターの講師もしていたらしい。
俺が初めて江蔵さんを知ったのはピンナップスだった。
新宿ロフトのパブタイムに入り浸っていたドラマー、今井智さんの元のバンドだったからだ。
ここからは、呼び慣れた、今井ちゃんで許して貰おう。
今井ちゃんは、スロッグというバンドでデビューした。
俺は今でも、スロッグのデビューアルバムを持っている。
ライナーノートには、ボンゾが好きだと書いてあったような。
その後、ピンナップスに参加し、俺と知り合った頃は、ダンガンブラザーズバンドをやっていた。
ピンナップスのメンバーは、元ガールズのリタ（Vo）、江蔵浩一（Guitar）、堀井隆之（Bass）、今井智（Drums）。
ガールズには、後にジューシーフルーツで売れたイリアも在籍していた事で有名だ。
古いアメリカンポップな感じは、近田春夫の影響を感じさせる。
そして、このバンドの魅力は、何と言ってもキュートな声で歌うボーカルのリタだった。
残念ながら、ガールズもピンナップスも生では見ていない。
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ピンナップス解散後、江蔵さんとリタが再起して組んだバンドが、センセーショナルフィクションズだった。
早速、センセーショナルフィクションズのライブを観に行った。
吉祥寺の成蹊大学の学園祭に出演すると、今井ちゃんから聞いていたのだ。
テントの模擬店でビールを買って飲みながら始まるのを待った。
大学の広場で、日が明るいうちに演奏が始まった。
入場料を払った記憶がないので、無料だったのだろう。
今井ちゃんがドラムソロで叩きまくっていたのは覚えている。
この時は、ライブが終わるとすぐにメンバーは控室に帰ったので、話をする機会はほとんど無かった。
挨拶程度で終わったと思う。
次は渋谷で行われたライブだった。
今井ちゃんの招待で、バックステージパスをもらっていた。
場所は、ライブイン村さ来。
当時話題となった、これでも居酒屋かいな「村さ来」だった。
井の頭線の線路沿いに、画期的な居酒屋とライブスペースが一緒になったホールがあったのだ。
居酒屋風のテーブルが並んだ奥に立派なステージがあり、お客は座って飲みながらライブを楽しめる。
キャパは広かったが、数年ですぐに潰れてしまった。
俺は、会社が終わると、急いで渋谷に向かった。
この時はサラリーマンになりたてで、スーツ姿だった。
ライブが始まるまで、もう時間が無い。
渋谷で電車を降りると、井の頭線の高架脇へ走る。
ライブイン村さ来には、開演直前に滑り込んだ。
ライブの記憶は30年以上前なので、ほとんどない。
ステージ下手で帽子を被り白いシャツにベスト姿の江蔵さんを覚えている。
ライブが終わろと、打ち上げがこの会場で行われた。
さすが「これでも居酒屋かいな 村さ来」だ。
飲み屋なので、準備も万端だ。
まずは、ビールで乾杯。
俺は、江蔵さんと今井ちゃんの前に座った。
江蔵さんが、智にもこんなサラリーマンの知り合いがいるんだな。
と、言った言葉が忘れられない。
江蔵さんは、穏やかな人柄で、飲むとさらに陽気になった。
俺の斜め前にはリタが座っていた。
しかし、彼女の顔を直視出来なかった。
なぜなら、俺の大好きなアイドルだったからだ。
ずっと、江蔵さんと今井ちゃんの方を向いて飲んでいた。
結局打ち上げの最後までお邪魔した。
その後、下北沢で会った時も、江蔵さんはカッコイイ兄貴だった。
白いシャツにベストが似合う。
井の頭線で別れた姿が今でも焼き付いている。
ありがとう。
そして、さようなら。
謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
ーつづくー
